雑木の杜庭とは
雑木の杜庭は、里山に見られる「雑木林」をヒントに、「身近で育った雑木と野草をいかした、人が関わることで保たれる、里山のような自然の風景を感じられる庭」と私たちは考えています。
雑木は、夏の陽を遮り、庭と住まいに涼をもたらします。 冬には葉を落とし、あたたかな陽射しを取り込みます。 春のみずみずしい芽吹きや、野の趣のある花、夏の木洩れ日、紅葉、冬枯れの風情など、一年を通して、自然の美しさと季節の移ろいを感じることができます。
「雑木」は、狭義に「日本に自生する落葉樹」を意味しますので、身近で育った落葉樹の庭木を植えることが「雑木の杜庭づくり」の基本です。しかし、雑木の代表格であるコナラやケヤキなどは成長が早く、大きく育つ樹種のため、庭のスペースや周辺環境を考慮したうえで慎重に選ぶ必要があります。また、自然界の雑木林のように雑木が密集している状態も、「住まいの庭」としては注意が必要です。数年後に自然優位な「森」のように大きく成長してしまい、 日当たりや風通し、隣地への落葉、はみ出しなどの心配が出てくるためです。私たちは、あくまでも「住まいの庭」として、無理なく手をかけながら心地よさを保てる庭を目指し、樹種の選定や数・配置を行っています。
雑木の杜庭によく使われるアオダモやナツハゼ、モミジなどは、1本1本異なる樹形を持ち、その「木の個性」を感じることは、庭を見る楽しみの一つです。 私たちは、その場所にふさわしい樹形の木を見つけて、その個性が美しく際立つように余白を残しながら、植え付けていきます。 つくりすぎないシンプルな庭は、見た目にも心地よく、光や風が通り、管理がしやすく、費用をおさえることができます。
雑木の杜庭は、下枝が少なく頭上で枝葉が広がるような高木と、目の高さくらいまでの中低木、それらの木の足元に地被(下草・芝など)を植えることで構成させるのが一般的です。 なるべく複数の樹種を組み合わせて、立体的に構成すると、ゆたかな表情が見られます。 落葉樹をメインに、冬の緑となる常緑樹を組み合わせると、冬枯れの時期にもさびしい庭になりません。 カラフルな彩りの植栽は極力抑えて、できるだけ身近で育った雑木や山野草を使い、自然のやわらかい色や、新緑や紅葉、実の色など季節によって変化する色を楽しみます。
私たちは、なるべく人工の素材は使わず、石や土、自然がつくった素材を使って、環境にやさしく自然に還る庭づくりを心がけています。 それが、長い目で見て、地域の環境をゆたかにすることだと考えています。 そのように自然素材をいかした庭は、周囲に馴染むやわらかい雰囲気になり、地域にとっての緑の景観になります。
また、私たちは、単に植栽をするのではなく、駐車場や駐輪場、家庭菜園スペース、ウッドデッキ、薪棚など、住まいに必要な要素を取り込みながら、 建築と庭とが心地よくつながり合い、さまざまな「時」を生み出す場となるように、と考えながら設計をしています。 心地よい外空間での「時」は、心ゆたかな暮らしをつくり、子供たちの自然教育の場にもなります。
雑木の杜庭の手入れは、日々かかわることから始まります。 朝起きて、小さな庭を歩いてみる。 枯れた葉を取ったり、咲き終わった花を切ったりしているうちに、「このあたりに何か植えたいな」「ボリュームを少し落としたいな」などとやりたいことが出てきます。 剪定は、なるべくお客様自身でやっていただきたいと考えています。少し手間がかかるかもしれませんが、庭との関わりがある分、愛着のわく庭になっていくと思います。 自分でやってみているうちに、自然と、自分の庭にある植物との付き合い方が分かってきます。